1.はじめに
近年、ディープラーニングにより大きく進化した人工知能(AI)技術は、デジタル化やWeb技術の進歩と相まって、ビジネスへの活用が大きく広がっています。この「第3次AIブーム」と呼ばれる社会の流れは、現在進行系で多くの産業に変革をもたらしていますが、同時に、AIエンジニアの中ではディープラーニングに関する「E資格」や「G検定」と呼ばれる資格を取得する人が増えてきています。
今回は、E資格について簡単にご紹介しながら、E資格対応講座の現役講師がおすすめするE資格対策本を5冊ご紹介します!
それでは早速見ていきましょう。
2.E資格とは
E資格とは、JDLA(一般社団法人日本ディープラーニング協会)が主催する、ディープラーニングについて網羅的かつ深い知識と技能を有していることを証明するためのエンジニア向けの資格試験です。
試験は年に2回実施されており、E資格の受験者の多くは、実際にAIに関連する業務に従事している社会人や研究者が多いと言われています。試験ではディープラーニングの理論や実装に伴う実践的且つ専門的な知識が求められます。
3.E資格の受験資格と受験料
E資格は受験意思があってもすぐに受けられる資格ではありません。受験をするためには、JDLAが認定している「JDLA認定プログラム」(講座)を受講・修了し、E資格の受験資格を付与されることで受験が可能となります。付与された受験資格は「JDLA認定プログラム」の修了日から2年間有効で、受験資格が有効な間は何度でも受験が可能です。一般的な受験料は33,000円ですが、学生やJDLA会員であれば受験料に割引が適用されます。
4.E資格試験の出題内容と合格率
E資格の試験ではディープラーニングに関する体系的な知識が問われます。試験のシラバスの内容は数年に1度変更があり、2022年6月時点のシラバスでは「応用数学」「機械学習」「深層学習」「開発・運用環境」の4つのカテゴリが試験範囲となっています。
試験時間120分に対して、基本的には多肢選択式の問題が100問程度出題されます。中にはソースコードの記述が必要な問題もあり、コード記述に関してはPythonでの記述が求められます。また、2022年8月の試験からは、PyTorchもしくはTensorFlowを利用した実装の問題も出されます。
ここ数年のE資格の合格率は60〜70%で比較的高い傾向にあります。しかし、前述の通り、受験者はAI関連の業務従事者や研究者が多く、日頃からAIに触れて知識や技術をある程度有していることを考えると、簡単な試験ではないことが伺えます。
さらにE資格は過去問が公開されておらず、受験者からの問題の公開や情報共有も禁止されているため、受験前の対策が難しいという声もあります。
5.E資格対策におすすめの本
E資格では、過去問等の情報公開がないことに加え、G検定のような公式の対策テキストも存在しないため、自分で参考書を選んで対策をするしかありません。
ここでは、E資格の取得を目指す人におすすめの書籍を5冊紹介します。いずれの本もNABLASが提供するE資格対応講座の現役講師がおすすめする本です。ぜひ学習の参考にしてください。
ディープラーニングに関する基礎知識を正確かつ分かりやすく学ぶことができる書籍です。画像認識・音声認識・自然言語処理やTransformerなど幅広いトピックが扱われており、E資格対策に役立ちます。「今」のディープラーニングの仕組みや活用可能性、課題点を効率よく学習できる技術解説書とも言えるでしょう。
文字通り「ゼロから」ディープラーニングの処理の作り方が解説されているため、ライブラリでは隠れている「結局中で何が起こっているか」を理解することができます。E資格では理論や実装への本質的な理解が問われるため、こちらの本で実際に手を動かしながら学ぶことで仕組みの本質的な理解と実装力を鍛えることができます。
Pythonコードの例を豊富に掲載し、実運用に重きが置かれたプログラミング解説書です。モデル作成以前の課題からモデルの構築まで丁寧に解説されており、実践的なテクニックや実装力を身につけたい人におすすめの一冊です。
強化学習で必要な数学的理論を幅広く丁寧に解説している本です。あくまでも数理的な事項を主に解説しているため、実装方法やコードの学習ではなく、実装のベースとなる理論を学び基礎力を強化したい人におすすめの1冊です。
ライトノベルのような感覚で「統計」の基礎知識や概要を学ぶことができる入門書です。標準偏差、分散、確率変数や帰無仮説などの概念がやさしく丁寧に解説されており、すでに統計の知識がある方は復習に、初学者の人には入門書としておすすめの1冊です。
6.E資格のメリット
最後にE資格を取得することで得られるメリットについて簡単にご紹介します。
E資格取得のメリットは大きく3つあります。
まず1つ目は、ディープラーニングに関する幅広い知識の獲得ができることです。前述の通り、E資格はディープラーニングに関する理論や知識だけでなく、状況に応じた適切な実装力が試される試験です。E資格を取得することで、単にサンプルやコードをマネするだけの実装では無く、ディープラーニングの理論や仕組みについて理解した上で、自ら最適な手法を選んで実装する力を養うことができると言えます。
2つ目は、(就職・転職・異動などで)AI分野に関わる業務や役職につく際に役立つということです。E資格を持っていることは、先端AI技術「ディープラーニング」について、幅広い技術と知識を有している証明となります。そのため、特にディープラーニングの実装業務がある企業ではアピール材料として活用することができますし、AI技術を活用しようとしている幅広い企業において、採用における客観的な指標として利用されることでしょう。AI技術が非常に多くの産業へ変革をもたらしていることを考えると、将来性のある資格であるといえます。
そして3つ目は、合格者向けコミュニティへの参加やそれらを通した人脈作りができることです。
E資格の合格者には、合格者のみが参加可能なコミュニティやイベント・勉強会が存在しています。コミュニティでは合格者同士で情報を共有することで、合格後も継続的にモチベーションを維持することができます。また、イベントや勉強会では、有識者らの特別講演を聴くチャンスもあり、ディープラーニングに関する最新の知識や情報の獲得に役立てることができます。
7.最後に
AI技術、特にディープラーニングの技術は、ビジネスへの活用が多く見られるようになってきており、今後は更に様々な分野での実用化の動きが広がると予想されます。そんな社会を支えていくのは、ディープラーニング技術を正しく理解し、市場価値の高い技術を実装できるAI人材です。今回ご紹介したE資格は、正にそんなAI人材であることが証明される資格です。ぜひ、本記事で紹介した本も活用しながら、E資格の取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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